つばさ会60周年記念講演会:航空宇宙自衛隊に向けて
つばさ会60周年記念講演会を令和7年12月11日(木)グランドヒル市ヶ谷において開催した。
航空幕僚長の代行として航空幕僚副長の門間空将にご登壇頂き、「航空宇宙自衛隊に向けて」いう演題でご講演を頂いた。
講演終了後、杉山会長から本講演に対する謝辞と今後の激励の言葉が述べられた。
幹部学校副校長 空将補 金野 浩子
1 はじめに
本日は、業務の都合により航空幕僚副長の門間が代理で講演いたします。まず、航空幕僚長からの挨拶をご紹介します。
「皆様、こんにちは。航空幕僚長の森田です。つばさ会創設60周年、誠におめでとうございます。昭和40年の創設以来、つばさ会はOB・OGの皆様が絆を深め、知見を共有し、後進を温かく見守る組織として航空自衛隊を支えてこられました。60周年は諸先輩方の尽力の証であり、そのご貢献に深甚なる敬意と感謝を申し上げます。隊員家族へのご支援にも心より感謝いたします。今回は『つばさ会創設60周年記念講演』という貴重な機会を賜りましたが、業務の都合により皆様の前でお話しできないことをお詫び申し上げます。また、本年、T-4墜落事故等でご心配をおかけしましたことを深くお詫びします。事故が連続して発生している現状は、平成11年、12年に匹敵する危機的状況にあると認識しており、私自身が先頭に立ち、全隊員一丸となって一層の安全確保に取り組んでいるところです。引き続き、諸先輩方のご指導、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。」
2 近況
令和7年3月、統合作戦司令部(JJOC)が発足し、陸海空自衛隊を一元的に指揮できる常設司令部が誕生しました。これにより、領域横断作戦の一元的指揮や迅速な対応が可能となりました。
また、10月には高市内閣が発足し、防衛省も新体制となりました。総理の就任当初の発言どおり、今年度の安全保障関連経費は補正予算と合わせGDP比2%に達するとともに、安保関連3文書の来年中の改定を目指し検討が進められています。これは、国際情勢の変化に対応し、抑止力と対処力を強化するための重要な取り組みです。
3 我が国を取り巻く安全保障環境
力による一方的な現状変更の試みは、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序に対する深刻な挑戦であり、国際社会は、戦後最大の試練の時を迎えています。ロシアによるウクライナ侵略は国連憲章に違反し、国際秩序を揺るがす重大な懸念事項です。また、科学技術の急速な進展により、戦い方に変化が生じています。ロシアとウクライナ間のみならず、中東のイランとイスラエル間の争いにおいても、有人機と無人機を組み合わせた攻撃が行われる等、無人機の役割が一層重要になっています。宇宙・サイバー領域では、通信・測位・気象などの宇宙システムが重要インフラとなり、主要国は衛星能力強化や対衛星兵器(ASAT)対策を進めています。
次に、我が国周辺の安全保障環境についてです。インド太平洋地域は、安全保障上の課題が多い地域であり、核兵器を含む大規模な軍事力を有し、普遍的価値やそれに基づく政治・経済体制を共有しない国家が複数存在しています。
中国は、東シナ海や南シナ海において一方的な現状変更の試みを継続し、活動を活発化させています。2024年8月に長崎県男女群島沖における中国軍機として初めての領空侵犯、2025年5月に尖閣諸島周辺における海警船搭載ヘリによる領空侵犯、6月には中国空母が太平洋上において2隻同時に展開する等、我が国周辺の海空域においても、活動を拡大、活発化させています。中国の動向について注視し、引き続き警戒監視及び対領空侵犯措置に万全を期してまいります。
北朝鮮は、核・弾道ミサイルの開発を依然として継続しています。近年、低空を変則的な軌道で飛翔する弾道ミサイルの発射を繰り返すなど、ミサイル関連技術・運用能力を急速に向上させている状況です。こうした北朝鮮の軍事動向は、我が国の安全保障にとって、従前よりも一層重大かつ差し迫った脅威となっています。
ロシアは、ウクライナ侵略を継続するとともに、戦略核兵器の近代化や新型装備の導入を進め、大規模演習を実施する等、活発な活動を継続しています。2024年9月には、ロシア軍機が北海道礼文島北方で領空侵犯し、航空自衛隊の戦闘機が初めてフレアを使用して警告しました。中国との軍事的連携も強化する動きが見られ、中露共同飛行や軍事演習への相互参加等が行われています。中露両国による度重なる爆撃機の共同飛行等は、我が国に対する示威活動を明確に意図したものであり、我が国の安全保障上、重大な懸念です。
4 航空自衛隊の取り組み
このような安全保障環境の中で、航空自衛隊の取り組みについて説明します。
まず、人的基盤の強化についてです。入隊者獲得のため、基地見学、説明会、学校訪問、イベントなどにおいて対象者の年齢や関心に応じたアプローチの展開を図っています。この際、主体的なリクルータ派遣やSNSの活用に力を入れています。また、隊員の処遇改善(手当の新設や引き上げ等)、生活及び勤務環境の改善(営内居室の個室化等)を推進し、隊員の士気高揚及び組織の魅力化を図っています。このように、既存の制度や考えにとらわれず、人材確保、処遇の改善等、有効な対策を講じてまいります。
次に、同盟国及び同志国等との連携強化についてです。力による一方的な現状変更を許容しない安全保障環境を創出するためには、同盟国のみならず、一か国でも多くの国々との連携強化が極めて重要です。2024年には、航空自衛隊70周年の記念行事の一環として、10名の参謀長等を含む19か国、20名の代表を東京に招へいし、「自由で開かれたアジア太平洋」の実現の意義、重要性について認識を共有するとともに結束をより強固なものとしました。さらに、2025年9月には、北米・欧州親善訪問(Atlantic Eagles)において航空自衛隊の戦闘機が空中給油機及び輸送機と連携し、初めてカナダ及び欧州(イギリス、ドイツ)に展開し、欧州・大西洋及びインド太平洋の安全保障が不可分であり、相互に連関しているという認識を航空自衛隊として体現することで、信頼関係を強化させました。
また、国家防衛戦略に示されたスタンド・オフ防衛能力や無人アセット防衛能力などの7つの重視分野の完整に向け、航空防衛力の抜本的強化に取り組んでいます。具体的には、スタンド・オフ・ミサイル(JSM、JASSM等)の整備、PAC-3MSEの整備、次世代JADGE事業による指揮統制能力の向上、RQ-4B等の無人機の運用、宇宙作戦団(仮称)の新編、SDA衛星の打ち上げ、輸送力の強化、弾薬・部品の確保、ミサイル共同生産(DICAS: Forum on Defense Industrial Cooperation, Acquisition and Sustainment)、装備品の可動数最大化、戦力保全施設の整備などを進めています。
5 結び
航空自衛隊が国民の負託に応え続けるためには、急速な変化に適応し、統合運用に資する精強な組織であり続ける必要があります。引き続き、国家防衛戦略において示された7つの分野を重視した能力を強化し航空防衛力の抜本的強化を着実に推進するとともに、宇宙領域における能力強化を加速し、「航空宇宙自衛隊」への飛躍を目指します。
今後とも、つばさ会の皆様には航空自衛隊の活動へのご理解とご協力、並びにご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
