7年度つばさ会・JAAGA合同講演会:令和8年度航空自衛隊予算の概要及び航空防衛力整備に係る取組みの状況について

令和7年度から年1回の講演会(三木会)をJAAGA(日米エアフォース友好協会)と合同で実施することとし、同講演会を令和8年1月15日(木)グランドヒル市ヶ谷において開催した。
今回は空幕会計課予算班長の荒瀬友日都1佐と空幕防衛課長の坂田靖弘1佐に「令和8年度航空自衛隊予算の概要及び航空防衛力整備に係る取組みの状況~航空宇宙自衛隊に向けて~」いう演題でご講演を頂いた。
講演終了後、杉山会長から本講演に対する謝辞と今後の激励の言葉が述べられた。

令和8年度航空自衛隊予算の概要

空幕会計課予算班長 1等空佐 荒瀬 友日都

1 予算編成経緯

令和8年度予算編成は、例年とほぼ同様の日程で進められ、令和7年12月26日に政府案が閣議決定された。また、令和7年度補正予算については、11月28日に閣議決定され、12月16日に成立した。

【概算要求まで】

令和7年6月13日に「経済財政運営と改革の基本方針2025」、いわゆる「骨太の方針」が閣議決定された。また、8月8日には「令和8年度予算の概算要求について」が閣議了解され、概算要求基準が示された。
防衛省は、「防衛力整備計画対象経費については、防衛力整備計画を踏まえて要求」との概算要求基準に基づき、防衛力抜本強化実現のため、令和8年度中に着手すべき事業を積み上げるとともに、昨年度からの事業の進捗状況を踏まえ、歳出予算の要求額を着実に増額し、概算要求を行った。
その結果、防衛関係費の概算要求は、歳出予算が対前年度3,706億円増の8兆8,454億円(SACO関係経費及び米軍再編経費のうち地元負担軽減分に係る経費を除き、デジタル庁・各府省共同プロジェクト型システム及び各府省システムに係る経費を含む。)となった。

【政府予算案決定まで】

【政府予算案決定まで】
令和7年11月21日に閣議決定された「強い経済を実現する総合経済対策」において、「安全保障環境に対応するための防衛力整備」を進めること、また施設整備を含め自衛隊員の処遇を改善し、自衛隊の活動基盤の強化や環境の改善を図ることと示された。
防衛省は、これを受けて「自衛隊の活動基盤や災害への対処能力の強化等」として2,213億円、「自衛隊等の安全保障環境の変化への的確な対応」として6,259億円等、計8,472億円を計上し、補正予算が成立した。
また、12月9日に閣議決定された「令和8年度予算編成の基本方針」において、防衛関連として、「国家安全保障戦略」等に基づき、防衛力の抜本的強化を推進するとともに、防衛力の中核たる自衛隊員の処遇改善に取り組むこととされた。
防衛省は、「令和8年度予算編成の基本方針」に基づき、整備計画期間内の防衛力抜本強化実現に向け、令和8年度において必要かつ十分な予算を確保した。
こうして編成された令和8年度予算のポイントとして、財務省は次のとおり言及している。

①防衛力整備計画の4年目の予算である令和8年度予算においては、防衛力強化を着実に実施するため、「整備計画対象経費」として8兆8,093億円を計上(対前年度+3,345億円)。「SACO・米軍再編関係経費」2,260億円を含む防衛関係予算全体では、9兆353億円(対前年度+3,349億円)を計上。
②「整備計画対象経費」に係る新規契約額として8兆2,607億円(対前年度▲1,725億円)を計上。「SACO・米軍再編関係経費」5,852億円を含む全体では、8兆8,459億円(対前年度+562億円)を計上。
③各種スタンド・オフ・ミサイルの取得等によるスタンド・オフ防衛能力の強化(9,733億円(契約ベース))や、ペトリオット・システムの改修等の統合防空ミサイル防衛能力の強化(5,091億円(契約ベース))に引き続き取り組むとともに、無人アセットによる多層的沿岸防衛体制【SHIELD】の構築(1,001億円(契約ベース))等の無人アセット防衛能力の強化に係る予算を計上する。また、領域横断作戦能力として、例えば、宇宙領域においては、次期防衛通信衛星等の整備に取り組む。
加えて、従来不足が指摘されていた装備品等の維持整備や弾薬の確保についても引き続き必要な予算を計上する。また、火薬庫の整備や自衛隊部隊の新編及び新規装備品導入などに伴う施設整備等に取り組む。
④研究開発については、多国に先駆け先進的な能力を実現することとしており、次期戦闘機の日英伊共同開発に加え、次期戦闘機と連携する無人機の構想設計にも着手するほか、各種誘導弾の研究開発、無人アセット防衛能力としてUAV連携型AI駆動オフロードUGVの新規研究など、幅広い分野に経費(7,095億円(契約ベース))を計上。防衛生産基盤の強化についても、引き続き着実に推進。
⑤厳しい環境下での訓練や共同訓練の指揮統制等に長時間従事する隊員に対する手当の拡充、若年定年退職者給付金の給付水準の引上げなど、生活環境改善等も含めた処遇改善を進めることで自衛隊の人的基盤を強化。
⑥SACO・米軍再編関係経費については、移設事業等を着実に推進するため、2,260億円を確保。

これらのことから、防衛力の抜本的強化は重要課題と位置づけられ、防衛関係費への予算配分が重視されたものと考える。

2 経費の概要

【令和8年度航空自衛隊予算(案)】
以下、防衛力整備計画対象経費について説明する。歳出予算は、対前年度773億円減の1兆8,675億円となった。
歳出予算の内訳として、人件糧食費は、対前年度121億円増の4,445億円、歳出化経費は、対前年度863億円減の1兆969億円、一般物件費は、対前年度31億円減の3,261億円となった。
また、新規後年度負担については、対前年度1,447億円減の1兆6,148億円となった。
一般物件費と新規後年度負担を合わせた契約ベースでは、対前年度1,477億円減の1兆9,409億円となった。

【航空自衛隊予算案の総括】
総括すると、前年度までと比較して歳出予算、契約ベースいずれも対前年度から減額となっているものの、防衛力整備計画で計画されている所要の経費は確保され、着実に防衛力の整備が行われている。
令和8年度予算案については、防衛力抜本的強化実現のため、令和8年度中に着手すべき事業が計上された内容の予算となった

航空防衛力整備に係る取組みの状況~航空宇宙自衛隊に向けて~

空幕防衛課長 1等空佐 坂田 靖弘

1 はじめに

つばさ会の皆様には、航空自衛隊に対して平素からご支援いただき感謝申し上げます。本日は、令和8年度の航空自衛隊業務計画における主要事業の概要に加え、最近の防衛力整備に関する主要なトピック及び航空宇宙自衛隊に向けた取り組みについて説明させていただきます

2 航空自衛隊コア・バリュー

令和6年に空自は創設70周年を迎えました。70周年という節目及び航空宇宙自衛隊への改編という組織的な変革の時期に差し掛かることを踏まえ、変革の時代に耐え得る隊員の精神的な拠り所を明確化することを目的とし、隊員の「考え方」「働き方」の基盤となるコア・バリューを制定しました。
コア・バリューとして、私たちは「誠実」「即応」「挑戦」の3つの言葉を掲げております。隊員ひとりひとりが各バリューを理解・実践していくことを通じて、強さと優しさを兼ね備えた組織となり、もって使命を完遂できるよう引き続き努力してまいります。

3 令和8年度主要事業の概要

防衛力整備計画における主要な7つの柱を中心に空自の主要事業を説明します。

① スタンド・オフ防衛能力は、令和7年度から引き続きJSM及びJASSMの取得のほか、発射母機であるF-35及びF-2の能力向上等により能力の獲得、強化を行います。
② 統合防空ミサイル防衛能力は、次世代JADGEの製造のほか、輪島のFPS-3からFPS-7への換装、与座岳、佐渡のFPS-5及び高畑山のFPS-7に対するHGV対処能力の機能付加を行います。
③ 無人アセット防衛能力の獲得・強化は、防衛省の重点事業として「無人アセットによる多層的沿岸防衛体制(SHIELD)」に必要なレーダーサイト防衛用及び艦艇攻撃用UAVの取得を行います。また、スタンド・オフ・ミサイルの運用に必要な目標情報収集用無人機を取得します。
④ 領域横断作戦能力の強化は、宇宙領域関連として、我が国の人工衛星に対する電磁妨害状況を把握する衛星妨害状況把握装置(4型)の取得に必要な経費を計上しています。サイバー領域では、基地インフラ及びTNCSにおける監視装置の設置を含む空自クラウド(セキュリティサービス)の整備を行います。電磁波領域では、電子戦支援能力を強化するため、RC-2の取得を継続するほか、陸海空領域では、F-35等の戦闘機を取得します。
⑤ 指揮統制・情報関連機能の強化は、指揮官の迅速な指揮に資する空自クラウドの機能向上に係る事業を推進します。
⑥ 機動展開能力・国民保護態勢の強化は、KC-46Aの増勢を推進するほか、戦闘機等が民間飛行場等へ分散し、戦力を保全することで粘り強く戦闘を継続する、機動分散運用の態勢確立に必要な整備器材等の取得を推進します。
⑦ 持続性・強靭性の強化は、弾薬の確保としてAIM-120、AAM-4B等を取得するとともに、AIM-120の国内基盤の整備に必要な調査研究を行います。また、航空機の非可動解消に加え、主要司令部の地下化等、施設等の抗たん化を推進します。

その他、人的基盤の強化として、F-2用高性能シミュレータ等を取得し、教育訓練環境・訓練基盤を整備するとともに、営内の個室化をはじめ生活・勤務環境の整備に引き続き取り組みます。

4 最近の防衛力整備に関するトピック

(1)宇宙領域
宇宙領域に係る取組として、昨年7月に防衛省は、「宇宙領域防衛指針」を策定しました。本指針において、宇宙領域における防衛力強化は、①迅速かつ的確な戦況把握、②作戦の基盤となる衛星通信の確保、③機能保証、④相手方の指揮統制・情報通信等の妨げの4つのアプローチから行うこととしております。また、防衛力の強化には、官民や同盟国・同志国との連携が不可欠であり、防衛力の自律的強化を進めつつ、同盟国等と相互に補完し合う体制が必要です。空自としても本指針を踏まえ、各種整備に取り組んでいます。
空自は、令和2年に宇宙作戦隊を、令和4年に宇宙作戦群を新編する等、段階的に宇宙領域における能力強化を推進し、任務に当たっています。令和7年度は、宇宙空間の安定的利用に対する脅威に対応するため、任務遂行能力の強化として宇宙作戦群を廃止し、宇宙作戦団を新編予定です。また、前述の電磁妨害状況把握装置の取得を推進中です。
宇宙領域における態勢整備は、宇宙領域把握、機能保証、優位性確保の3つの段階に区分し、各種装備品を整備しています。宇宙領域把握に必要なSSAセンサーシステム等の整備のほか、今後の機能保証、優位性確保に向け、令和8年度はSDA衛星の打ち上げやレーザー測距装置の配備を予定するとともに、部隊を順次拡大するなど、引き続き機能強化・能力向上を図ります。

(2)F-35Bの配備等
F-35Bは、当初の計画では令和6年度に配備予定でしたが、納入の遅れにより、令和7年度に配備時期が変更となり、令和7年8月に3機、10月に2機の配備を完了しました。また、F-35Bの配備受入のため、令和6年度末、臨時F-35B飛行隊を新田原基地に新設しています。令和8年度には合計12機まで新田原基地に配備する計画であり、第202飛行隊を新編する計画です。

(3)無人アセット
無人アセットについては、ウクライナにおける教訓等から、人的損耗を局限しつつ、非対称的に優勢を獲得し得る革新的なゲームチェンジャーとしての役割を期待しています。空自としては、RQ-4Bのほか、侵攻部隊等の情報を収集する目標情報収集用無人機の実証研究、有人機と連携する無人機の研究開発等、無人アセットの早期取得・運用開始に向けて取り組んでいます。
空自における無人機の導入状況についてですが、滑走路等の被害状況を調査し、被害規模等の測量を行う被害復旧用ドローンは、平成29年度から取得を継続中です。輸送用UAVは、令和5年度から実証試験中であり、令和6年度には離島間の長距離輸送試験を実証済みです。RQ-4Bは、令和6年12月から本格的な運用を開始しています。
目標情報収集用無人機については、相手方の脅威圏内においてスタンド・オフ・ミサイル等の精密誘導兵器の運用に資する目標情報の収集を行う機体であり、主に対艦攻撃時におけるキルチェーン・センサーとしての役割を担います。本事業は、令和5年度末から会社役務による実証を開始し、昨年静岡県の富士川滑空場で飛行実証を行っています。飛行実証も踏まえた機体の能力向上改修、空自隊員への教育・訓練等を令和8年度までの間、業務委託により実施する計画です。
無人アセットの取り組みの最後にSHIELD構想についてご説明します。本構想は、無人アセットの導入や技術革新が進展したことに伴い、ウクライナにおける戦いに見るように戦闘様相も大きく変化しており、我が国においても高価な有人アセットを含む侵攻部隊から我が国を防衛するため、安価かつ大量の無人アセットを活用し、有人アセットとの組み合わせによる非対称的かつ多層的な防衛体制を整備するものです。令和8年度概算要求では、空自として、敵艦艇を攻撃するためのUAV、レーダーサイトを防衛するためのUAVの取得に必要な予算の査定を受けております。これらを早期取得・戦力化し、戦闘様相の変化に速やかに対応すべく防衛力整備に取り組んでおります。

(4)航空自衛隊馬毛島基地
我が国防衛上の問題認識として、我が国島しょ部に対する攻撃への対処等のため、西・南西地域における活動拠点の確保が課題となっており、また、F-35Bをはじめとする教育訓練基盤の確保が必要となっております。
馬毛島基地は、管制塔や隊庁舎等の飛行場支援施設、駐機場等及び訓練施設の建設工事が進捗中であり、F-35Bの発着艦訓練などの自衛隊の訓練のほか、米空母艦載機着陸訓練であるFCLPを行う計画です。空自は基地の早期開設に向け、令和6年度末に馬毛島先遣隊を新設し、令和7年8月から現地での活動を開始しました。先遣隊は、基地の早期運用開始に向け、必要となる施設の管理や各種装備品等の受入・維持整備等の諸準備を実施中です。

(5)人的基盤(処遇改善等)
処遇の改善等については、過酷な環境で勤務する隊員への手当の支給等、各種改善を図っています。令和6年度からはレーダーサイトで勤務する全隊員への手当、令和7年度はパイロットや航空機整備等に従事する隊員の処遇改善を進めています。令和8年度は、航空作業手当や宇宙領域専門部隊等の夜間特殊業務手当、航空手当等の支給範囲の拡大が認められ、また、共同訓練・統合演習等に参加した隊員に対する手当、母基地以外に展開した航空機に随伴し、整備作業等を行う隊員に対する手当が新設される等、拡充される予定です。
人材確保については、定年退職した自衛官を勤務実績等に基づく選考により再任用する制度(定年再任用)として、令和6年度以降、新たに宇宙業務の適用を開始しました。また、中途退職した自衛官を退職前の勤務成績等に基づく選考により再任用する制度(元自再任用)については、令和元年度から採用を開始しています。なお、再任用制度の内、再任用自衛官が従事可能な業務に航空機の操縦はこれまで含まれませんでしたが、昨今の募集環境の悪化等を踏まえ人材を有効活用する観点から業務内容を再度分析した結果、定年退職操縦者を教育部隊等の操縦教官業務に、また、元自衛官の操縦者を戦闘機以外の機種における操縦業務に従事可能としております。

(6)防衛協力・交流
空自は、二国間・多国間の枠組みを活用し、ハイレベル交流、実務者交流、共同訓練等、防衛協力・交流を積極的に推進中です。特に、日米同盟を基軸に、同志国等との間で多層的な防衛協力を推進しており、豪州、ASEAN、インドとの協力を強化するとともに、インド太平洋地域への関与を強化している欧州諸国等との防衛協力・交流を推進しております。ここでは、昨年実施した取組を3点紹介します。
まず、米軍演習のレゾリュート・フォース・パシフィックですが、米空軍のACE運用の組織的な実行を目的とした演習であり、空自部隊も参加し、防空戦闘訓練のほか、戦闘機の展開訓練等を実施しました。在日米軍基地に空自機が、空自基地に米軍機が展開するなど、日米同盟の抑止力・対処力の強化を図りました。また、日米豪の共同訓練である武士道ガーディアン25に参加しました。日米豪のF-35が日本に集結し、訓練する機会としては初となりました。日米共同対処能力の強化、豪空軍との相互運用性の向上を図るほか、日米豪の強固な連携を国際社会に対して発信しています。最後に、昨年末のつばさ会記念講演でもご紹介しましたが、空自戦闘機をカナダ及び欧州に初めて派遣しました。訪問先では、空幕長によるハイレベル交流、派遣部隊による部隊間交流を通じ、相互理解を促進し、防衛協力・交流を進展させました。このような航空アセットを用いた多層的な取り組みを今後も追求してまいります。

5 航空宇宙自衛隊に向けて

我が国の国家防衛戦略に空自を航空宇宙自衛隊とする旨が明記され、防衛力整備計画には、宇宙作戦能力を強化するため、将官を指揮官とする宇宙領域専門部隊を新編するとともに、空自を航空宇宙自衛隊とすることが明記されました。防衛力整備計画期間中の令和9年度までに、航空宇宙自衛隊へ改称すべく、これまで各種検討・準備を行ってきましたが、令和8年度概算要求を行い、査定されております。
宇宙関連の令和8年度事業としては、自衛隊初となるSDA衛星の打ち上げを予定し、指揮通信等を妨げる能力の更なる強化などにより宇宙領域に係る本格的な運用が可能となる見込みです。併せて空将を指揮官とする宇宙作戦集団を新編し、宇宙領域専門部隊が航空総隊等と並ぶ空自の主要部隊となります。宇宙領域は、空自にとって単なる監視活動の対象ではなく、作戦行動を行う領域となることを踏まえ、空自を航空宇宙自衛隊へ改編し、宇宙空間の安定的利用を確保するとの我が国の決意を内外に示すべく各種準備に取り組んでおります。

6 おわりに

本日、ご参集されている皆様をはじめとして、つばさ会、日米エアフォース友好協会の皆様にもご指導ご協力をいただきながら、空自の精強化をしっかりと進め、航空宇宙自衛隊に向けた取り組みを推進してまいります。