3年度第4回 : 令和4年度航空自衛隊業務計画及び予算(案)の概要

令和3年度第4回目の講演会(三木会)を令和4年1月20日(木)グランドヒル市ヶ谷において開催した。

 今回は、空幕会計課長の木村政和1佐と空幕防衛課長の富川輝1佐に、「令和4年度航空自衛隊業務計画及び予算(案)の概要」という演題でご講演を頂いた。

 講演終了後、斎藤会長から本講演に対する謝辞と、今後の激励の言葉が述べられた。

【令和4年度航空自衛隊業務計画の概要】

航空幕僚監部防衛部防衛課長
 1等空佐 富川 輝

1 令和4年度予算の考え方

「平成31年度以降に係る防衛計画の大綱」(平成30年12月18日閣議決定)及び「中期防衛力整備計画(平成31年度~平成35年度)」(平成30年12月18日閣議決定)に基づき、宇宙・サイバー・電磁波といった新領域における能力、海空領域における能力、多様な経空脅威へ対処する総合ミサイル防空能力、スタンド・オフ防衛能力、機動・展開能力、弾薬の確保や装備品の維持整備等、変化への対応に必要な防衛力を大幅に強化し、多次元統合防衛力を構築する。

 あわせて、ゲーム・チェンジャーとなり得る技術等の研究開発や防衛産業基盤を強化するとともに、人的基盤、安全保障協力を強化する。

 このような考え方に基づき、令和3年度から防衛力強化を加速するため、令和4年度当初予算に計上する予定の事業をこれまでにない規模で前倒して実施することとし、令和3年度補正予算及び令和4年度当初予算を「防衛力強化加速パッケージ」と位置づけ、一体として編成することにより、防衛力を大幅に強化する。

 この際、資源を柔軟かつ重点的に配分し、効果的に防衛力を強化し、あらゆる分野での陸海空自衛隊での統合を一層推進し、組織及び装備を最適化する。加えて、格段に厳しさを増す財政事情などを勘案し、一層の効率化・合理化を徹底する。

2 主要事業の概要

領域横断作戦に必要な能力の強化における優先事項

ア 宇宙・サイバー・電磁波等の領域における能力の獲得・強化
(ア)宇宙領域における能力

 SSA衛星(宇宙設置型光学望遠鏡)を整備するため、必要な衛星地上システムの詳細設計及び製造・運用等に必要な技術支援を得る。

 SSAレーダー測距装置を整備するため、装置の設計、製造及び試験を行う。

 SSA衛星の運用を行うシステム等を整備するため、米軍及び国内関係機関等と連携した宇宙状況監視を行うために必要な器材の取得等を行う。

 組織体制の強化として、宇宙作戦群(仮称)に改編し、宇宙空間の状況を常時継続的に監視する体制を構築するため、要員を拡充する。また、我が国の人工衛星に対する電磁妨害状況を把握するため、第2宇宙作戦隊(仮称)を新編するとともに、宇宙領域に関する装備品を維持管理する宇宙システム管理隊(仮称)を新編する。

 諸外国との国際協力として、米宇宙軍基地で実施する「Space 100」課程等への要員の派遣及び宇宙分野における多国間机上演習等に参加する。

(イ)電磁波領域における能力

 電子防護能力に優れたF-35Aを8機、F-35Bを4機取得するほか、整備用器材等の関連経費を計上する。

 F-15を能力向上させ、スタンド・オフ・ミサイルの搭載、搭載弾薬数の増加及び電子戦能力の向上等に必要な改修を実施する。

 現有の電波情報収集機YS-11EB後継としてRC-2を製造するため、RC-2の機体構成品を取得する。

 米国の電子戦教育課程へ要員を派遣し、航空自衛隊の電子戦運用、教育及び電子戦態勢整備を的確かつ効果的に実施する。

イ 従来の領域における能力の強化
(ア)海空領域における能力

 多様化・複雑化する経空脅威に対応するため、自動警戒管制システムを能力向上(AI機能を導入)し、指揮官の状況判断の迅速性及び確実性を向上する。

 滞空型無人機(RQ-4B)の運用態勢強化のため、臨時偵察航空隊を廃止し、偵察航空隊(仮称)を新編する。

 周辺諸国の航空戦力の近代化に対応するため、F-2を能力向上させ、ミッションコンピュータの能力向上、ネットワーク機能の向上等に必要な改修を実施する。

 81式短SAMの後継として、巡航ミサイル、空対地ミサイル等の脅威に効果的・効率的に対処できる基地防空用SAMを取得する。

(イ)スタンド・オフ防衛能力

 スタンド・オフ・ミサイルを搭載できるF-35Aの取得、F-15の能力向上及びF-2の能力向上によりスタンド・オフ・ミサイルの搭載に必要な改修を実施する。

(ウ)総合ミサイル防空能力

 能力向上型迎撃ミサイルPAC-3MSEの取得及び所要のPAC-3ミサイルを確保するため、PAC-3ミサイルの再保証を実施する。

(エ)機動・展開能力

 C-1の減勢による航空輸送力の低下を回復しつつ、各種事態における迅速かつ大規模な輸送・展開能力を確保するため、航続距離や搭載量等の能力を向上したC-2を取得する。

(オ)無人機の活用・無人機への対処

 基地警備におけるレーザー・システムの運用要領の研究及び基地警備における監視機能強化に関する実証を行う。

ウ 持続性・強靭性の強化

(ア)継続的な運用の確保

航空優勢の確保に必要な対空ミサイル及びPAC-3MSEといった各種弾薬を取得する。

 敵の攻撃による航空機の被害を局限すべく、駐機場のほかに航空機が緊急的に待避・分散して駐機できる分散パッドを整備する。

 各種事態において、航空基地の滑走路が被害を受けた場合に、より迅速な復旧に対応可能な復旧用器材を取得する。

 自衛隊施設の老朽更新及び耐震化対策の推進のため、自衛隊の任務遂行を支える基盤である庁舎、隊舎及び宿舎など、自衛隊施設の改修等を行う。

(イ)装備品の維持整備に係る取組の推進

 装備品の部品取得、修理役務といった維持整備に必要な経費を計上する。

(2)防衛力の中心的な構成要素の強化における優先事項

人的基盤の強化

ア 女性活躍・働き方改革及び生活・勤務環境の改善の推進

女性自衛官の教育・生活・勤務環境の基盤整備のため、隊舎の女性用区画の整備、女性自衛官の生活勤務環境改善のための整備、女性自衛官教育基盤を整備する。

 庁内託児施設の備品等の整備のため、認可保育施設としての事業所内託児施設を運営するにあたり必要な備品等を取得する。

 緊急登庁支援用備品等の整備のため、緊急登庁支援に必要となる備品等を取得する。

 自衛隊員が士気高く任務に専念できるよう、隊員の生活・勤務環境の改善のため、生活・勤務環境改善のための備品、日用品等及び自衛隊施設を整備する。

イ 衛生機能の強化

 国際的に脅威となる感染症等への対応能力の向上のため、関連各種器材の取得及び維持を実施する。

(3)大規模災害等への対応

 災害時における災害対処拠点となる基地等の機能維持・強化のための耐

震化・津波対策の推進に必要な経費を計上する。

(4)安全保障協力の強化

ア インド太平洋地域の安定化への対応

 大規模災害発生時等、迅速かつ効果的な支援活動を行うため、ミクロネシア連邦等における人道支援・災害救援共同訓練に参加する。

イ グローバルな安全保障課題への適切な対応

 ソマリア沖・アデン湾における海賊対処のため、多国籍の連合部隊である第151連合任務部隊に参加して活動を実施する。

(5)効率化・合理化への取組

ア 事業に係る見直し

 基地防空用SAMの取得を前倒すことで、81式短SAMの4巡目定期修理が不要となり、定期修理に係る経費約22億円の縮減を図る。

イ 一括調達・共同調達による効率化

 C-2用エンジン2式の一括調達により、約26億円の縮減を図る。

ウ 長期契約を活用した装備品等及び役務の調達

 今後取得予定のC-2に必要な機体構成品の一部を先行取得すること

により、約3億円の縮減を図る。

3 自衛官定数等

(1)自衛官定数

 前年度から66名増の46,994名が認められた。

(2)自衛官実員の増員

 317名の増員が認められた。

(3)事務官等の増員

 宇宙領域専門部隊の体制強化をはじめとする宇宙領域事業の推進のための増員等を実施する。

【令和4年度航空自衛隊予算の概要】

航空幕僚監部総務部会計課長
1等空佐 木村 政和

4 予算編成経緯

 令和4年度予算編成は、新型コロナウィルス感染症の流行2年目の予算要求であり、空幕は交替制勤務の中での編成作業であったものの、例年と同様の日程で進められ、令和3年12月24日に政府案が閣議決定された。また、令和3年度補正予算については、11月26日に閣議決定、12月20日予算成立した。

【概算要求まで】

 令和3年6月18日に「経済財政運営と改革の基本方針2021」いわゆる「骨太の方針」が閣議決定された。また、7月7日には「概算要求に当たっての基本的な方針」が閣議了解され、概算要求基準が示された。

 防衛省は、昨年度同様、概算要求基準の上限額内で概算要求を行った。

 その結果、防衛関係費の概算要求については、歳出予算が対前年度3562億円増の5兆4797億円(SACO関係経費及び米軍再編経費のうち地元負担軽減分に係る経費を除き、デジタル庁・各府省共同プロジェクト型システム及び各府省システムに係る経費を含む。)となった。

【政府予算案決定まで】

 11月19日に閣議了解された「コロナ克服新時代開拓のための経済対策」において、ミサイル防衛能力や南西地域の島嶼部の防衛等に必要な防衛力強化を加速することとされ、「自衛隊の変化する国際情勢への即応的な対応」、「自衛隊の安定的な運用態勢等の確保」が具体的に示された。また、 12月3日に閣議決定された「令和4年度予算編成の基本方針」において、「骨太の方針」における「令和4年度予算編成に向けた考え方」に基づいて、新型コロナウィルス感染症の状況を踏まえつつ、メリハリの効いた予算とし、いわゆる「16か月予算」の考え方で令和3年度補正予算と、令和4年度当初予算を一体として編成することとされた。

 防衛省は、これを受けて、令和3年度から防衛力強化を加速できるよう、令和4年度当初予算と合わせて、令和3年度補正予算においても、現下の安全保障環境に対応するために必要な事業をしっかりと確保し、令和3年度補正予算及び令和4年度当初予算を「防衛力強化加速パッケージ」と位置づけた。

こうして編成された令和4年度予算のポイントとして、財務省はホームページ上で次のとおり言及している。①令和4年度の防衛関係費は、5兆4005億円を計上(中期防対象経費、SACO・米軍再編、政府専用機関連経費の総額。)。

②中期防対象経費については、「中期防衛力整備計画」を踏まえ実質+1・1%の伸び率を確保し、5兆1788億円を計上。宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域における能力の強化など、多次元統合防衛力の構築を推進するとともに、原価の精査、仕様の見直し等の装備調達の最適化や、重要度の低下したプロジェクトの見直しを徹底。

③新規後年度負担については、将来における予算の硬直化を招かないよう総額を抑制しつつ、2兆9022億円を計上。うち中期防対象経費は、中期防で規定された新規契約額の上限(17兆1700億円程度)を踏まえつつ、防衛力整備の効率化・合理化を徹底し、2兆4583億円を計上。

④防衛力整備の効率化・合理化を徹底することにより4390億円の縮減を実現。

 これらのことから、歳出予算の自然増を抑制する等、財政健全化に向け徹底した歳出予算の見直しが行われる中、防衛関係費については一定の伸びが認められる等、昨今の安全保障環境を踏まえ防衛関係費への予算配分が重視されたものと考える。

5 経費の概要

【令和4年度航空自衛隊予算(案)】

 以下においては、中期防対象経費について説明する。歳出予算は、対前年度434億円増の1兆1672億円で、対前年度3・9%の増となった。

 歳出予算の内訳として、人件糧食費は、対前年度26億円減の4041億円、歳出化経費は、対前年度194億円増の5892億円、一般物件費は、対前年度266億円増の1739億円となった。

 また、新規後年度負担については、対前年度465億円減の8188億円となり、一般物件費と新規後年度負担を合わせた契約ベースでは、対前年度199億円減の9928億円となった。

【防衛力強化加速パッケージ(令和4年度航空自衛隊予算(案)及び令和3年度航空自衛隊補正予算の総額)】

 歳出予算は、対前年度1835億円増の1兆4839億円で、対前年度14・1%の増となった。

 歳出予算の内訳として、人件糧食費は、対前年度11億円減の4056億円、歳出化経費は、対前年度659億円増の7884億円、一般物件費は、対前年度1187億円増の2899億円となった。

 また、新規後年度負担については、対前年度145億円減の8556億円となり、一般物件費と新規後年度負担を合わせた契約ベースでは、対前年度1042億円増の1兆1455億円となった。

【航空自衛隊予算案の総括】

 総括すると、「防衛力強化加速パッケージ」の下、令和4年度当初予算を、令和3年度補正予算と一体として編成することにより、これらの予算をあわせると(いわゆる「16か月予算」)前年度比で大幅な増額を認められた。

 結果として、令和4年度予算案については、30防衛大綱に基づく31中期防の4年度目として、多次元統合防衛力を着実に構築していくことができる内容となった。


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